関西文学散歩 カルチャーウォーキング 詳細

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2016.01.12 【報告】
第506回関西文学散歩
~瓶原(みかのはら)で夢見た恭仁京造営の謎!~
2016年1月10日(日)終了 <天気:晴れ時々曇り 参加人数79名>
山城国分寺跡
万葉歌碑

 前々日の予報が晴れに変わり、朝から青空。行きがけの関西線では、加茂駅が近付くにつれ山影の下草が薄く霜で覆われていてゾクっとしましたが、駅に到着すると小春日和のよう。いっときに気分も高揚したところで出発合図。今日の文学散歩の一冊『続日本紀』は、ずいぶん前に挑戦しかけて、面倒臭そう、難しそう、と早々に断念したのでしたが、澤田ふじ子さんの『天平大仏記』が面白く読めて、今日は2冊の本の組み合わせにも興味津々です。

 駅前の大仏鉄道モニュメントとランプ小屋。名古屋方面の人たちも東大寺大仏拝観のためにこの鉄道を使ったのだと初めて知りました。加茂文化センターではまず『天平大仏記』の物語概略や時代背景の解説です。そして山城郷土資料館の森下館長さんから、物語の時代に造営された恭仁京や山城国分寺の遺構と自然背景を、プロジェクターを使って丁寧に説明をしていただき、唐国に倣った「復都制」という言葉も新鮮でした。『天平大仏記』は、『続日本紀』の記述を裏付ける考古学上の発見と地元の地理の中で、人物たちを自在に動かし歴史に肉付けした物語と、再び文学の分野からの説明。作品の舞台は主に紫香楽ですが、〝久仁〟は橘諸兄の勢力下にあったそうで、この地で新京が造営された事情を合点して、昼食後はいよいよ現地へ。

 船屋の町並み、兼輔の「みかのはら湧きて流るる…」歌碑、家持の「今造る久邇の都は…」の万葉歌碑を見て保存センターへ。ビデオと遺物見学の後、松尾学芸員に、東の塀際の道の跡だという田んぼ沿いの道から北側の東西の道へ、そして大極殿の基壇や七重塔の礎石群、昨年発掘された幢旗(どうき)遺構へもご案内いただき、分かり易く説明していただきました。

 朱雀大路だったという道を下って帰途についた時にはもう3時過ぎ。ずいぶん歩いた気がしましたが、泉川(木津川)の悠久の流れ、回りを山々に囲われた伸びやかな〝瓶原〟の風景が疲れを忘れさせてくれていたのでしょうか。聖武天皇や橘諸兄、もしや造仏工の天国や当麻呂などの登場人物たちも一緒に歩いてくれたかも…と言い合いながら駅への道を急ぎました。今日もまた発見と興奮の一日を有難うございました。

 

テキスト:澤田ふじ子『天平大仏記』(中公文庫)、宇治谷孟訳『続日本紀』(講談社学術文庫)

コース:加茂駅-大仏鉄道ランプ小屋-加茂文化センター(講演)-船屋と加茂浜-恭仁大橋の歌碑2基-文化財整理保存センター-国史跡・恭仁京跡-朱雀の井戸-加茂駅

<報告:岩井よおこ>

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