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2016.05.18 【報告】
第510回関西文学散歩
~飛鳥の謎の石造遺物「益田岩船考」ふたたび……。~
2016年5月8日(日)終了 <天気:晴れ 参加人数42名>
集合駅にて
益田磐船

 今月のコースに「益田磐船」があり、一度行きたいところでしたので何が何でも参加しなければと、年甲斐もなく前日からソワソワしました。初めて朝日新聞の連載で「火の路」、当時の題名は「火の回路」でしたが、それを毎日楽しみに読み、作品中に紹介される飛鳥の〝謎の石造物〟を一人で探し歩いたものでした。でも「益田磐船」だけは、近鉄吉野線の線路を挟んで飛鳥地域とは反対側になるという事で、結局見残したままになっていたのです。

 数えてみれば、あの頃から40年ぐらいは経っています。集合の岡寺駅へ向かうまでは、ついこの前のような気がしていたのですが、その頃の私は「火の路」の主人公、高須通子とたぶん同い年ぐらい、いえもう少し若かったか、もちろん結婚前のこと。当時の飛鳥観光マップには猿石も亀石も二面石も酒船石も…どれも案内されておらず、尋ね尋ねして探し回った記憶があり、きっとそれで疲れ果て、そのままになっていたのだと腑に落ちました。

 益田磐船――清聴は「石の基壇上にならぶ二つの方形孔を見ていると、筆者の連想は…イランの…ゾロアスター教の拝火壇に結ぶ…」と書いていますが、白橿中央会館での講演で、田中先生はその用途説について、(イ)益田池完成記念碑文台、(ロ)火葬墳墓、(ハ)物見台、(ニ)占星台、そして(ホ)拝火壇の5つの説を紹介されました。清聴のゾロアスター教云々説にはかなり否定的なご様子で、振興会のスタッフとの間で文学と科学、そして文学と文芸の話にも発展しそうなのも面白く興味深かったです。もう少し時間があったら…と残念。

 で、いよいよ磐船が坐す山へと上ります。5つの説のうち皆さんはどの説を? まったく別の説? 実際に磐船を見て、自由に想像し、古代史ミステリーに挑戦してみてください、という事でしたが、私は最初の読後感が強烈だっただけに、やはりゾロアスター教かな? 付近には古墳も多く、垂仁天皇の同母弟である倭彦命埋葬の悲惨さから、近習者殉死の禁令が発せられたという事も初めて知った一日でした。いつも新しい発見や驚きのある文学散歩ですし、とくに今回は若い頃のワクワク感に戻れて感謝しています。

 

テキスト:松本清張『火の路』(文春文庫 上・下)、宇治谷猛訳『日本書紀・全現代語訳』(講談社学術文庫)

コース:近鉄・岡寺駅-牟佐坐神社・万葉歌碑-白橿中央会館(講演)-白橿近隣公園(沼山古墳・万葉歌碑)-益田磐船-小谷古墳-倭彦命墓-宣化天皇稜-益田池堤跡-近鉄・橿原神宮西口駅(中途解散)-深田池(橿原神宮苑内)-近鉄・橿原神宮前駅(最終解散)

<報告:岩井よおこ>

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