関西文学散歩 カルチャーウォーキング 詳細

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2017.07.21 【報告】
第524回関西文学散歩
~開高健とナウマン象がいた町-我孫子(あびこ)周辺~
2017年7月9日(日)終了 <天気:曇り 参加人数62名>
あびこ観音寺
我孫子鋳物師碑前

 今回のカルチャーウォークは、7月の暑い最中、60余名の参加となり、我孫子・杉本町と大阪南部のディープな界隈を大勢が歩く興味深いものだった。あびこ観音寺を拝観した後、昔、開高健が牧洋子と住んでいたという棟割長屋跡の軒さきも歩いたが、そこの住民の方々はさぞかし迷惑だったことだろう。説明は、すぐ近くの「我孫子鋳物師碑」前の空き地で聞いた。

 開髙健に対する私のイメージは、TVコマーシャルで見ていた精悍な風貌・巨体・美食家といった程度で、その著書にふれることもなく、今日まできてしまった。しかし、今回のテキスト『破れた繭―耳の物語』を読み、その語彙の豊富さと美しさ、繊細さに圧倒された。最初の数頁にある廃屋の中にあった香水瓶の残香、ハスの花の開く音に驚く描写……。人には、鼻の記憶、耳の記憶、舌の記憶があるが、ある日突然、不意に心と体をふるわせることがある。「聞く光景」「見る音楽」なんて表現はどこから出てくるのだろう。本著は自伝的小説とあるが、子供時代、泥にまみれて遊ぶ描写には泥の感触まで書かれている。開髙健の「絶対的感覚」は、持って生まれたその感性からくるのは当然だが、その圧倒的読書量から齎されたのかもしれない。

 教師だった父を早くに亡くし貧困を極めていた開髙健に、中学時代の1年先輩だった谷沢栄一はたくさんの本を貸してやった恩人である。谷沢の家の2階から唐草模様の風呂敷にかつげるだけの大量の本を包み、汗をかきつつ運ぶ姿は読書欲にかられた若者そのもので好ましい。貧しさ故に経験したバイトは、パン焼き見習工、漢方薬きざみ、手動式旋盤見習工、スレート工場の荷物運搬、圧延見習工、家庭教師、宝クジ売り、闇屋の留守番、市場調査員、ポスター張り、選挙の連呼屋、『ヴォーグ』の翻訳、外国映画スターへのファンレターの翻訳、英会話教師と多岐にわたる。親のお金で学費をまかなっている学生にはとうていできない経験である。

 今回は住吉区民センターで、「開髙健、関西悠々会理事」吉村直樹先生のレクチャーもあった。……

 

 ≪全文は上記PDFファイルをご覧ください≫

 

テキスト:開高健『破れた繭――耳の物語』(新潮文庫)、小玉武『開高健――生きた、書いた、ぶつかった』(筑摩書房)

コース:JR阪和線「我孫子町駅」<集合>-住吉区民センター (講演)-神光寺・あびこ行者堂-あびこ観音寺-開高健・牧洋子寓居跡~我孫子鋳物師碑-アジアンミュージアム(市立我孫子南中学校内)-大阪市立大学(講堂・開高健コーナーなど、構内一部見学)-JR「杉本町」駅

<報告:田原由美子>

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