関西文学散歩 カルチャーウォーキング 詳細

ホーム > 関西文学散歩 カルチャーウォーキング > 報告 > 詳細
2018.01.31 【報告】
第530回
~朝ドラと小説「花のれん」はどう違う?~
2018年1月14日(日)終了 <田原由美子記>
北新地へ向けて出発
毎日新聞大阪本社・旧社屋玄関

天気:晴れ 参加人数:73名

 大阪では、というより全国的に、いまや吉本興業の名を知らぬ人などいないのではないかというくらい、テレビ界は吉本のタレント抜きには成りたたないほどである。今回の主なテキストは山崎豊子の小説『花のれん』で、その主人公のモデルが吉本興業の創業者、吉本せいである。折しもNHKが朝の連続ドラマ『わろてんか』で吉本せいを取りあげる、というので期待していたが、ドラマの冒頭で「てん(主人公の名前)は笑うことが何より好きな女の子であった」で違和感を覚え、次々と出てくる設定が不自然であり、『花のれん』の内容とは自ずと乖離(かいり)している。視聴率を気にするドラマの制作上しかたないのかもしれないとは思うものの、正直なところ失望した。

 今回の文学散歩は、「山崎豊子の作家デビュー時代を歩く」とある。山崎さんは『白い巨塔』や『華麗なる一族』『不毛地帯』など、社会派小説家として数々の大作を残されているが、『暖簾』でデビューし、2作目の『花のれん』で直木賞を受賞、そして『ぼんち』など初期の作品では一貫して大阪商人の知恵と才覚を描いていてとても興味ぶかい。その作家としての地歩を固めたのがかつての勤務先、北新地のすぐそばの毎日新聞社(旧社屋跡は現在、堂島アバンザ)だった。今日はそれでまず、大阪駅から、山崎さんが勤務していた旧本社の社屋跡、そして現在の毎日新聞大阪本社ビルをめぐった。

『花のれん』の吉本せい(作品では多加)は、夫である吉本吉兵衛(吉三郎)が芸人道楽の末に寄席興業に乗り出し、それを助けていくうちに、せいが持って生まれた才能を発揮して成功を収めるという物語だ。その中にはいかにもとうなずける吉本商法のエピソードもあり面白い。例えば、にわか雨が降り出すと雨やどりの客が寄席に詰めかける。そうすると今まで木戸口にかけてあった「五銭」とある木札を裏返し、「十銭」を表に向ける、という次第である。25才にして9歳上の夫を亡くし、それまで二人三脚で吉本を支えてきたせいは、そこで獅子奮迅のはたらきをみせて事業を発展させていく。その中で「必要なものには惜しげもなく金を投ずるが無駄と思うものには一銭たりとも払わない」と大阪商法を貫いた。また、芸人に対して非常にめんどう見は良かったが、努力しない芸人には冷たかったらしい。これは当然のことだろうが―。

 あわせて矢野誠一氏の「女興行師 吉本せい‐浪速演藝史譚」も読んでみた……、

 

 ≪全文は上記PDFファイルをご覧ください≫

 

テキスト:山崎豊子『花のれん』(新潮文庫)・『暖簾』(新潮文庫)、矢野誠一『女興業師 吉本せい-浪速演藝史譚』(ちくま文庫)

コース:「大阪」駅…北新地文化銘板(一部)…旧・毎日新聞大阪本社(堂島アバンザ)…現・毎日新聞大阪本社…朝日新聞創刊の地碑…新町廓跡(新町北公園)…山崎豊子生家…四ツ橋旧跡…地下鉄「四ツ橋」駅

<報告:田原由美子>

織田作之助賞
織田作之助青春賞
文學回廊
入会のご案内はこちら
PDFの閲覧はAdobe Readerを
ダウンロード(無償)してください。
ページの先頭へ