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2019.05.28 【報告】
第545回
~佐藤愛子の甲子園生活と阪神間モダニズム~
2019年5月12日(日)終了 <田原由美子記>
佐藤愛子旧宅跡
JR甲子園口駅にて集合

天気:晴 参加人数:40名

 今回のカルチャーウォークのテーマは「佐藤愛子の甲子園生活と阪神間モダニズム」。JR「甲子園口」駅集合。快晴。今回はなぜか、会員より一般の方々の参加の方が多かったようだ。女性作家がテーマなのにもかかわらず男性の参加者も多く見うけられた。

 さて、佐藤愛子さんは現在96才。83歳で自叙伝ともいえる3400枚の『血脈』を書かれている。内容は実に重い。それはまさに家庭崩壊とも言える様相である。父は佐藤洽六(紅緑)新聞小説や大衆小説を書かせれば当代人気随一。彼が新聞に小説を書けば購読部数は伸び、その小説を劇化すれば必ず当る。小説を書く前、彼は松竹新派の脚本を書いていた。その前は子規門下の俳人で、その前は新聞記者だった。彼は小説を書く傍ら「新日本劇」という小劇団の顧問をしていた。彼の家には妻と五人の子供。親族、女中、書生や居候、時をかまわずやってきては飯を喰い、勝手に泊っていく客の出入りの激しい家である。その家に舞台女優志望の横田シナ(三笠万里子)がやってきて複雑な関係が始まるのである。それにしても4人の息子達の暴れぶりはすさまじく今どきの子供などの比ではない。金の無心、女性問題、あげくは薬、長男八郎の悪童ぶりは父親ゆずりで度を越してはいるが、要領よく文才もあり、後にサトウハチローの名で作詞家としても有名である。

 息子達の乱暴狼藉ぶりは洽六の権力嫌いと社会の矛盾への憤りであり、彼の小説の中に一貫して流れるモチーフである。不良少年と言われた彼の中には常に正しいもの、清純なものへの強い憧れが流れつづけていて、彼の小説に情熱的な力を与えた。善玉悪玉をあやつる勧善懲悪という批判を無視し、少年倶楽部編集部が少年たちに与える訓言を洽六に依頼してきたとき、彼は「陽気に元気に生き生きと」と書いてきたそうだ。それこそは心から彼が少年達に望むことだった。警察沙汰をくりかえす息子たちの尻ぬぐいをし、金を与え甘えを助長させることしか愛情の示し方を知らない父親は悲しい。

 

 ≪全文は上記PDFファイルをご覧ください≫

 

テキスト:佐藤愛子『血脈』(上中下巻・改訂版//文春文庫)、佐藤愛子『これが佐藤愛子だ(2)』(集英社文庫)

コース:JR「甲子園口」駅(集合)―松山大学温山記念会館(外観)―武庫川学院甲子園会館(外観)―佐藤愛子旧宅跡―春風公民館(昼食・講演)―津門神社―JR「西宮」駅

<報告:田原 由美子>

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