関西文学散歩 カルチャーウォーキング 詳細

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2023.05.22 【報告】
第580回
「らんまん」の主人公・牧野富太郎博士と伝説のコレクター池長孟
2023年5月14日(日)終了 <瀬川司記>
神戸市立文書館
竹中大工道具館 大工道具展示

天気:曇時々雨 参加人数:18名

 小雨そぼふる神戸の街を歩きました。今月のカルチャーウォーキングは市営地下鉄・新神戸駅東口に集合。横井三保先生のいつもの溌剌とした声での挨拶は「今日は文学散歩始まって以来の少人数(ワースト記録)、18名で歩きます」。そう言いながらも表情はニコやかでした。

 最初に訪れた所は「竹中大工道具館」。今回のテーマとは相違しているのですが、道筋に所在していて、博物館としても充実。開設1984(昭和59)年の歴史をもち、老朽化が進んだ2014(平成26)年に、中央区中山手から現在地(中央区熊内町)に新築移転された、とのこと。

「大工道具? きょうみないなぁ……文学とどういう関係かな?」筆者の思いと同じ参加者もおられるのでは、と首をかしげながら入館。縄文時代から昭和の木造建築に使用された道具に加え、フランス・ドイツ製を含めて約3万5000点の大工道具がズラリと並ぶ。「木組」(釘を使わずに建築する技術)、国宝・唐招提寺金堂組物、大徳寺玉林院の茶室「簑庵」の縮小・復元模型の展示もあり、圧巻でした。古刹や神社・仏閣が頑丈であればこそ、貴重な古文書や仏像などの文化財が今日まで保存・保管されてきた――そう考えれば大工道具は文化の素!?かも、と錯覚させられました。

 同館から六甲山沿いに東へ行くと80余の石段上に熊内(くもち)八幡神社。境内には湊川の戦いで敗れた新田義貞がひと休みした「鎧かけの松」(現在2代目)や、俳人・窓雨の<秋はけさ来にけり 松のうしろより>と詠んだ「悲秋碑」、阪神大震災で倒壊した鳥居の一部の横に「震災の碑」がありました。

 新緑鮮やかな境内で、横井先生が今回テーマの植物学者・牧野富太郎博士のおい立ちや寿衛子(すえこ)夫人との間に13人の子供がいた話や、経済面で世話になったという人物=池長孟、久原(くはら)房之介の両氏との関わりetc.を熱っぽく解説。池長氏ゆかりの神戸文書館(元池長美術館)へ向かった。同館は私立池長美術館として1938(昭和13)年に開設。収蔵品の大半を神戸市に譲渡した1951(昭和26)年、市立神戸美術館として再開館。現在の文書館となったのは1989(平成元)年から。アール・デコの影響が見られる設計から神戸市景観形成重要建築物に指定されている。

 手水舎に可愛い大黒様が据えられた荒熊稲荷神社に参拝。稲荷神・宇迦(穀物・食物の意)之御魂神がご祭神で五穀豊穣・家内安全・社運隆昌・商売繁盛・守護にご利益があるそうな。

 普段立ち寄りそうもない所に導いていただき、貴重なウォーキング体験でした。感謝!

 

参考:牧野富太郎のこと――高知新聞社発行『高知県人名事典新版』より抜粋
 昭和12年「牧野植物学全集」の出版により朝日文化賞受賞。同26年「第1回文化功労者」、同28年「東京都名誉都民」。同32年1月18日、94歳で没後に「文化勲章」受章。墓地は東京都台東区(天王寺墓域)と、郷里の高知県佐川町(さかわちょう)奥の土居にある。同33年高知市に「牧野植物園」開園。4万5000冊の牧野蔵書は同園牧野文庫に。標本約4万点は東京都立大学牧野標本館に収められている。

 

テキスト:大原富枝『 草を褥(しとね)に』(河出文庫)、『牧野富太郎自叙伝』(講談社学術文庫)

コース:「新神戸」駅…竹中大工道具館…熊内八幡宮…神戸市立文書館(元・池長美術館)…荒熊稲荷神社…阪急「春日野道」駅

<報告:瀬川司>

 

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