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2022.06.29 【報告】
第570回
悲劇の女主人公・建礼門院徳子と、後白河法皇が辿った道
2022年6月12日(日)終了 <田原由美子記>
鞍馬街道を辿る
深泥池

天気:晴れ 参加人数:45名

―― 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる者久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き人も遂には滅びぬ、ひとえに風の前の塵に同じ。――

『平家物語』冒頭の一説で美文として知られている。この世の全ては変化、流転する、という真理を告げ、勢い盛んな者も必ず衰える、得意の絶頂にあっても長くは続かない、まるで春の短い夜のはかない夢のように。また、どれほど威勢を誇っても、最後は滅んでしまう。それはまるで風に吹き飛ばされる塵のようにもろい。

『平家物語』は『源氏物語』と並んで人気の高い作品であるが、作者については確定できないでいる。国家を二分するような源平の争いは国民に衝撃を与えた。戦没者の慰霊は、荒廃した人の心を和らげ、国家に秩序を回復するためでもあった。平家一門の浮かばれぬ諸霊を慰める長大な弔辞の意義を、この物語は担っていた。哀調を帯びた美文の底には慰霊の深い祈りが込められており、仏教文学とも言える。

『平家物語』は貴族社会から武家社会へとこの大きな構造改革の精神が根底を貫いている。そして『平家物語』は巻一から巻十二と、灌頂巻からなり、今回のカルチャーウォークは灌頂巻に焦点をあてて行われた。

 灌頂巻は平家が壇ノ浦の戦いで滅び、入水したものの生き残った平清盛の次女・建礼門院徳子の物語である。徳子は、亡き御子・安徳天皇と平家一門の菩提を弔うために吉田山で出家して、洛北大原・寂光院へ隠棲する。その彼女が辿った鞍馬街道は(市原から先は若狭街道・鯖街道という)、後白河法皇が、そんな徳子の見舞いに訪ねた「大原御幸」、その道でもある。

 6月12日午前10時、北山駅集合。まずは深泥池から深泥池地蔵堂(現在は上善寺)へ。
深泥池では蓴菜(ジュンサイ)採取の現場に出会う。小さいボートをうかべて手作業でとってきたたくさんの葉や茎の中からより分けられて、ザルに残ったのは見覚えのあるわずかなジュンサイ。蓴菜採りは、大変な苦労の結果なのだ。

 

 ≪続きは上記PDFファイルをご覧ください≫

 

テキスト:『平家物語・灌頂巻』より「大原御幸」(角川ソフィア文庫)

コース:「北山」駅…深泥池・説明ボード休憩所…深泥池地蔵…深泥池貴舩神社…圓通寺(比叡山を借景にした名園が有名)…補陀洛寺(小町寺)…京都バス「小町寺」バス停(解散/叡電「市原」駅まで800m)

<報告:田原由美子>

 

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