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2023.12.23 【報告】
第585回
蕪村・呉春・応挙、京都で語るそれぞれの恋模様
2023年11月12日(日)開催
京都市学校歴史博物館

第585回関西文学散歩・報告①
2023年11月12日開催
天気:晴れのち時雨 参加人数30名
~蕪村・呉春・応挙、京都で語るそれぞれの恋模様~

 今回の課題図書(テキスト)は葉室麟の「恋しぐれ」。かねてからこの作家に興味はあるものの手に取らないまま来てしまった。テキストを初めて熟読しその作風に魅かれた。まず内容が且つての京都画壇での出来事であるということだ。
 日本画に使われる岩絵具、繊細でありながらも力強い線を引く面相筆とその美しさに魅了されて、たびたびギャラリーには足を運んできた。偶然にも京セラ美術館で竹内栖鳳を見て、大阪中之島美術館では長澤蘆雪展に足を運び福田美術館の学芸員、岡田秀之氏のレクチャーを聞いてきたばかりであった。
 物語は俳人であり絵師でもある与謝蕪村の老いらくの恋から始まる。夜半亭という句会を催している67歳の蕪村であるが、京には他に伊藤若冲、池大雅、曾我蕭白らが画業を競っていた。江戸では浮世絵が庶民にもてはやされ、鈴木春信、勝川春章らが美人画を描いている。しかし京都画壇の絵師たちは、いずれも南画、あるいは写生画を描いていた。
絵師としての第一人者は円山応挙であり、ついで若冲、大雅、蕪村の順で、当時の絵は中国から渡ってきた絵を紛本(ふんぽん:手本)としてそのまま描くものとされてきた。ところが応挙は道端の草花から犬、猫まで細かく写生するのだ。私の知人に日本画家がいるが彼は常に「写生こそが基本である。そして古いものから学び、新しいものを取りいれることを恐れてはならない」と言う努力の人である。
 今回の恋しぐれは京都画壇のありようを知るようでとても興味深く読んだ。物語としても七つの連作短編集で実に人間味あふれるエピソードがちりばめられて楽しかった。特に主人公の蕪村が美術家として作品を生みだす時、恋は力になったかもしれないと思う。心のゆらぎ、感情があふれ出すとき、その気持ちを冷静に詠んで私達の心を打つ。
  春雨や ものがたりゆく簑と傘
  泣きんきて 花に隠るる 思いかな
  ちりて後 おもかげに立つ ぼたん哉
  老いそめて 恋も切なれ 秋の暮

テキスト:葉室麟『恋しぐれ』(文春文庫)
コース:「清水五条」駅…宮川筋…松原橋…不動寺…京都市学校歴史博物館…花咲稲荷神社(貞徳邸宅跡)…仏光寺…豊園水…蕪村宅跡…応挙邸跡…月溪宅跡…京都大神宮(解散)…阪急「河原町」駅 または 京阪「祇園四条」駅

<報告:田原由美子>

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