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2015.04.17 【報告】
第497回関西文学散歩
~作家と歩く―豊臣家の宝物はどこに…?~
2015年4月12日(日)終了 <天気:晴れ 参加人数52名>
興善寺本堂

 テキストは、4月9日に発売されたばかりの『浪華古本屋騒動記』。じつは、雑誌『群像』(講談社刊)2014年12月号・2015年1月号に連載されていて、作品はすでに読んでいました。豊臣家の宝物が隠されているという、とある海辺に近い遊郭と思しき建物。それがどこにあるのかは明かされていませんが、大阪府の地理にちょっと詳しければ、だいたい見当が付きます。しかし、多奈川とは??? もう少し大阪寄りの尾崎か箱作辺りかなァと思っていたのですが、でも、方向的には間違っていなかったと、まあ自足して集合地へ向かいました。

 みさき公園駅が近くなると、週刊天気予報でこの日だけ〝晴れ〟の広い空と、車窓に泉南の海が近寄ってきます。こういう時は、どうして「わァ、海だぁ~」って心が叫ぶのでしょうね。新幹線で富士山が見えた時と同じ反応をする自分が可笑しくなります。みさき公園駅で多奈川線に乗り換えて終点。多奈川は大阪府下でも最南部で、和歌山市の方がずっと近いという地域ですが、遠方にも関わらず、皆さん早くから集まっておられました。

 まず、目指したのは谷川港ですが、手前の観音崎に近い方が新港、南側の西光寺山側が旧港で、旧港は瓦の積み出し港でもあったらしいという話の、ほんのさわりを堂垣先生がしてくださいました。詳しくは、興善寺の庫裡で…ということのようです。その興善寺は、産土神社とともに文徳天皇の創建と伝わる静謐な古刹でした。堂々とした山門、唐招提寺を思わせる本堂の甍。境内の真ん中の池は、根来攻めの焼き打ちを避けて国宝級の重文仏像を沈めていたのだとか…。隣接する理智院も聖武天皇の開創で秀吉にもゆかりのお寺、両寺の幾星霜を経た寺観とご由緒から、この辺りが古く交通の要衝であり、文化の交差点であったことが窺えました。

 堂垣先生のレクチャーは、豊臣の大阪城の瓦、瓦を生業とした大坂寺島、瓦の原材料の土、谷川港などを結んで話され、「う~ん」と納得しかけたら、「小説家は嘘つきですから~」と煙に巻かれ、まさしく『浪華古本屋騒動記』の世界でした。要は、「ここかな? あそこかな?」と、自分なりに作品の舞台を見当付けて良いわけなのですよね。新鮮で美味しそうなお魚にも出会え、身体を思い切り伸ばせそうな多奈川の町歩きでした。

 

テキスト:堂垣園江『浪華古本屋騒動記』

コース:南海「多奈川駅」…谷川港…産土神社…興善寺(拝観・昼食・講演)…理智院…多奈川駅

<報告:岩井よおこ>

 

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