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2016.06.20 【報告】
第511回関西文学散歩
~古堤街道から谷崎と松子さんゆかりの別荘跡へ~
2016年6月12日(日)終了 <天気:曇りのち雨 参加人数53名>
根津家別荘跡(谷崎旧跡)にて
稲荷山から大阪の町を望む

 今回の集合案内に<…西口氏のエッセイには「谷崎潤一郎が住んだ根津家の山荘」という副題が付いており、現在の近鉄奈良線が開通する大正12年頃の東大阪市日下(くさか:旧孔舎衙村)周辺について説明されています>とあった。借金と男女の三角関係に喘いでいた筈の…、いや身辺鬱陶しくはあっても喘ぐような谷崎ではないか…、ともかく、高野山にも居ずらくなり、引っ越す先を探していた時に、一先ずの落ち着き先として起居していたのがこの別荘だった筈だ。

 長らく、その場所は特定出来ていないと聞いていたが、その作品が収載されている『大阪春秋81号』はすでに絶版で、図書館で借りてコピーをし、文学散歩当日に臨んだ。住道駅前の高架橋上から、恩智川の分流を見る。ここから野崎詣りの舟はその観音井路(谷田川)を上っていたそうだ。ついと口の端に上る「野崎詣りは~、屋形船で参ろう~」の子供時代の記憶とは街道碑のところで分かれ、谷崎寓居跡の稲荷山へ向かった。

 西口氏のエッセイでは、そこは茫々の藪に変貌していて、石段の跡と根津家親戚の木津家が建てた石碑が残るぐらいとあったが、現在は、阪奈道路直下に動物霊園が整備されており、木津氏が分祀したという稲荷山神社も社殿を新たにしている。西口氏が見つけて日下リージョンセンターの前庭に移築したという石燈籠と蹲は、どの辺りにあったのだろう。庭園の位置までは分からなかったが、いまも大阪の町場を一望できるこの景色は、高層ビルを除けば、谷崎が見た風景ときっと同じなのだろう。

 山川幸雄園長は、谷崎との地縁を感じると仰られていたが、そんな稲荷山を日下リージョンセンターに向けて下って行く途中、「青雲の白肩津に泊てたまひき…」と『古事記』の神武東征に登場する物語の顕彰碑を見ることもできた。案内のコースには書かれていたのに、目的外だったゆえか、思わぬ大きな余禄のような気がし、これも谷崎からの贈り物の一つに違いないと思える一日だった。

 

テキスト:谷崎松子『倚松庵の夢』(中公文庫)、西口孝四郎「東大阪日下の町場商家の別荘」(『大阪春秋81号』)

コース:JR・住道駅-古堤街道道標-平野屋新田会所跡-東高野街道交点道標-楯津濱碑-根津家別荘跡(谷崎旧跡)-神武天皇楯津聖蹟顕彰碑-日下リージョンセンター(谷崎ゆかり//講演//中途解散:路線バス乗車可)-近鉄けいはんな線(地下鉄中央線乗入れ)「新石切駅」<最終解散>

<報告:田添浩一>

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