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2014.06.17 【報告】
第488回関西文学散歩
~日本最古ともいわれる集落と葛城の古代鍛冶集団~
2014年6月8日(日)終了 <天気:晴時々雨 参加人数47名>
脇田神社を目指して
葛木坐火雷神社(笛吹神社)にて

 ワカタケル大王とは雄略天皇のこと。古代の天皇の中でも傑出して面白い天皇だと、ずいぶん前に黒岩重吾さんの小説を読んで印象を深くしたことがありました。そのワカタケルと戦ったのが葛城円大王という葛城一族の長で、その一族にゆかりある土地を訪ねてみたいと思っていたので、今回は絶好の機会でした。

 歴史博物館での神庭先生の講義、この辺りを拠点としていた古代の鍛冶集団の話、周辺に点在する古代古墳群の謎、発掘遺跡などの説明は分かりやすく、一つ一つになるほどと頷かされました。展示物を説明付きで展観した後は館の隣りの角刺神社へ。ここは、飯豊女王という天皇の系譜からは抹消された女性の皇居があったところと推定されているそうです。その女帝の名を聞くのも初めてでしたが、ワカタケルの皇子である清寧天皇と、市辺押磐の皇子である顕宗天皇との間の執政者で、その経済的背景が女王の血縁である葛城氏と推測されているようなのです。

 近くからは鉄の残滓や羽口(送風の吹込み口)などが見つかっており、飯豊女王は葛城氏の中でも鉄製品の生産に携わった一族の長であったのかもしれません。推理が推理を生んで歴史ロマンを自分勝手に膨らませながら、皆さんと一緒に笛吹神社(葛城坐火雷神社)へと向かいました。暑さの中、葛城山の頂上に雨雲がかかり、おかげで涼しい風が吹き下りてきたのにはほっと一息でした。

 笛吹の名は、吹奏を楽する集団に由来するというのですが、果たしてそうなのでしょうか。鍛冶に必要な「火」を崇め、羽口を吹いて風を送る人々が祖神を祀り、事業の安泰を祈ったのではないかしら? 勝手な想像がどんどん羽を広げていきます。そしてこの集落は、司馬遼太郎が「……この日本最古の集落名のひとつは…」と『街道をゆく-第1巻』に記したところなのです。その科学的真偽は別として、歴史ミステリーの舞台として、これほど面白いところはないと思いました。どなたか、飯豊女王を主人公にした小説を書いて下さらないかしら…。

 

テキスト:司馬遼太郎『街道をゆく・第1巻』・黒岩重吾『ワカタケル大王』

コース:忍海駅…葛城市立歴史博物館…角刺神社(角刺宮跡)…脇田神社…笛吹神社…屋敷山
古墳公園…柿本神社…近鉄「新庄」駅

<報告:岩井よおこ>

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