関西文学散歩 カルチャーウォーキング 詳細

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2017.02.24 【報告】
第519回
~『その街の今は』を歩く~
2017年2月12日(日)終了 <老家文雄記>
茶臼山石碑前で
白クマ舎前で

天気:晴れのち雨 参加人数35名

 日本列島を襲った大寒波は、これでもか、これでもかと続いている。早朝の大阪の最低気温はマイナスを記録し、天気予報は「日中の気温は6度くらい」と告げた。今日は、関西文学散歩で大阪出身の作家・柴崎友香ゆかりの地を歩く日だ。行先は天王寺界隈。胸中で「何回も行ってよく知っている庭みたいなところだ。よりによって、こんな寒い日に行かなくても…」、いや「“燈台もと暗し”で知っているのはガイドブック程度、天王寺をより深く知る絶好の機会だ、寒さが何だ、行こう…」と、「行こうか、止めようか」の二つのココロが、綱引きを始める。で、結局、ケセラセラ的トライ精神が判定を下した。

 天王寺駅に集合したのは35人。この人数は多いのか、少ないのか? 今日の講師は「待ってました」と大向こうから声のかかりそうな人、関西の文学振興のために精力的に活動されている高橋俊郎氏である。
 駅を後に“てんしば”へ。快晴、青空だ。陽の光もまばゆい。春だ! 天気予報は外れ。
その“てんしば”は、元の天王寺公園で、2015年にリニューアルされ、いまは入口付近や「芝生養生中」の立ち入り禁止の広場の両側に、レストランやカフェ、ドッグランなどが立ち並ぶ。早速、高橋講師よりこの公園の成り立ちや経緯などを聞いた。

 ――活動小屋の絵看板がごちゃごちゃと並んだ明るい通を抜けると、道はいきなりずり落ちた暗さで、天王寺公園であった。樹の香が暗がりに光って、瓦斯灯の蒼白いあかりが芝生を濡らしていた。美術館の建物が小高い丘の上にくろぐろと聳え、それが異郷の風景めいて、他吉は婿の新太郎を想った。――1942年発表の織田作之助の名作『わが町』の主人公、“ベンゲットの他あやん”が娘初枝とこの公園を訪れ、ベンチで初枝の夫新太郎がマニラで死んだことを打ち明ける場面など、詳しい解説は昼前に準備された講演会で話された。

 映画化された『わが町』で“他あやん”を演じたのは辰巳柳太郎だったと記憶しているが、本作は、『夫婦善哉』以上にぼくにとって心に響く作品である。1955年には椎名麟三の『神の道化師』、2013年発行の辻原登の『冬の旅』でも舞台になった。流転する人生をたどり、ホームレスとなった主人公の話だが、野宿者たむろする公園、近年は公道に「青空カラオケ」と称する露店が並んでいたが、これらを強制撤去し、2015年から今の姿“てんしば”になった。公園の管理は、近鉄に委ねられている。

 

 ≪全文は上記PDFファイルをご覧ください≫

 

テキスト:柴崎友香『きょうのできごと』(河出文庫)、『その街の今は』(新潮文庫)

コース:JR天王寺駅改札口前<集合>-てんしば-天王寺動物園-茶臼山-大坂の陣史跡碑-茶臼山ゲート―一心寺存牟堂-一心寺(講演)―安居神社(真田幸村公銅像)-堀越神社(楠の御神木)-天王寺駅

<報告:老家文雄>

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