関西文学散歩 カルチャーウォーキング 詳細

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2023.04.17 【報告】
第579回
鵜殿の葭原焼(うどののよしはらやき)と小説「淀川八景」
2023年4月9日(日)終了 <津田系子記>
本澄寺
神内かんなび公園

天気:晴れ 参加人数:45名

 高槻の名産品は寒天といわれていたが、周辺に海も見えず不思議に思っていた。しかし今回歩いてみて、上牧のこの辺りで広く天草の需要があり、それを刈り取った葭の立て簀に並べて乾燥させ寒天を作ったのだとわかった。広大な葭の繁茂する地は<春告の葭原焼き>もおわり、河川敷の菜の花が続く土手道を、爽やかな春風を受けながら広大な鵜殿の葭の原を歩いた。

 今回のカルチャーウォーキングは「鵜殿の葭原焼と小説『淀川八景』」がテーマだった。阪急上牧駅から、花水木の淡いピンクの花をながめながら神南備の杜へ行き、今は児童公園になっている地が古くからの交通の要所と知った。都と大宰府を結ぶ山陽道として栄え、官駅があったと推定される地である。案内板に山陽道を西へ向かう一行を見送る家族や友人という絵も描かれており、別れを惜しんだ別離の地でもあった。上牧は古代の牧(馬を飼った牧場)にちなむ、古い地名である。

 新興住宅地を抜けると、古くからの家々も見受けられ、その集落の中に本澄寺があった。この日蓮宗の寺院は文明3年(1471年)の開創とある。日蓮聖人顕示の大曼陀羅を本尊として祀り、世に上牧の高祖といわれる。 江戸時代初期に東福門院和子が祈願して以来多数の信仰を集め、往時は塔頭11坊を擁した大寺であった。昔も淀川の対岸から寺院の大屋根が見え、淀川を使い多くの人々が訪れたと想像できる。現在、本堂の屋根裏修復の工事中であったがその中まで登らしていただき、上牧の町を一望した。寺内の一角に、第41世のご住職であった三好龍神氏の兄であり、詩人三好達治のお墓がシンプルですがすがしく祀られていた。墓記名は泉鏡花の筆であったと聞いた。

 境内には三好達治の13回忌を記念して、遺族の手によって建てられた三好達治記念館があり、直筆の原稿や書簡などを保管・展示してある。蔵書も多く、当代の住職様にお話を聞くことが出来た。

 三好達治は1900年に大阪市西区西横堀町で印刷業を営む家に、10人兄弟の長男として生まれた。幼少期より病弱で、読書に没頭。中学時代、句誌「ホトトギス」を愛読し、句作に没頭した。父の意向で陸軍士官学校に進んだが、軍人には不向きと悟って中退。旧制三高から東大仏文科へ進んだ。三高時代から詩作を始め、梶井基次郎らと知己を得、のちに同人誌「青空」にも参加した。

 

 ≪続きは上記PDFファイルをご覧ください≫

 

テキスト:藤野恵美『淀川八景』より「趣味は映画」(文春文庫)

コース:阪急「上牧」駅…神南備の杜(神内かんなび公園)…本澄寺と三好達治のお墓・三好達治記念館…鵜殿葭の原碑…本澄寺…上牧駅(解散)

<報告:津田系子>

 

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