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2014.04.21 【報告】
第486回関西文学散歩
~官兵衛が荒木村重に宛てた書状と有岡城時代~
2014年4月13日(日)終了 <天気:曇 参加人数90名>
亀田先生講演
伊丹緑道(白洲二郎・正子旧居跡付近)

 「いま官兵衛の目の前にある藤の芽は官兵衛にとって、この天地のなかで、自分とその芽だけがただ二つの生命であるように思われた。その青い生きもののむこうに小さな天があり、天の光に温められつつ、伸びることのみに余念もない感じだった。…(後略)」(司馬遼太郎『播磨灘物語』より)

 前々日に、『播磨灘物語』を改めて繰ってみた。生への一縷の望みを抱く官兵衛の心境が、藤の小さな芽に託されて、流石に司馬さんと思わせる描写である。その、伊丹駅前の有岡城址が、本日の集合場所である。庭園遺構が発掘されたという「古城や茨くろなる蟋蟀」の上島鬼貫の句碑がある荒村寺を拝観した後、再び有岡城主郭北側に立った。石垣に囲われた広場の隅の、背丈の低い若い藤がもう小さな房を付けていたが、実際に官兵衛の幽閉場所付近に藤の木があったかどうか、確証は無いという。

 そして、有岡城が落城し、救い出された官兵衛…。「官兵衛自身、自分が変ったとは思っていない。自分にあたらしい心境が出来かかっていることは気づいている。しかし、その心境が熟するに至らず、というよりも、自分でも、なにか解釈のつけようのない感じで、いらだちがある。…(後略)」(同書より) 幽閉され、その間に盟友・竹中半兵衛の死があり、運命の過酷さを知った人間は新しいステージへ上らざるを得ないのだと思い知らされる。

 「ことば蔵」で伊丹市立博物館館長の亀田先生の講演を聴く。新たに確認され話題になっている道薫(荒木村重)から官兵衛に宛てた書状についてが講演のテーマ。配られた原本のコピーを見ながら聞き終えて、官兵衛が道薫に対して、敬意を込めて丁寧な物言いをしていることが意外であった。「村重を恨んでいる筈」と僕の頭に刷り込まれていたせいなのか。これまでの推理を覆しそうな歴史の事実の展開に、僕はまだ抗っているようだ。しかし、伊丹緑道を「辻の碑」へと歩いていくうちに、それにしても今日は、面白いものを見せて貰い、面白い話が聴けたといささかワクワクし始めていた。

 

テキスト:司馬遼太郎『播磨灘物語』、末國善己編『小説集 黒田官兵衛』

コース:JR「伊丹」駅…有岡城本丸跡…荒村寺(上島鬼貫の古城句碑)…猪名野神社と有岡城土塁跡…伊丹市立図書館「ことば蔵」 (講演)…発音寺…伊丹緑道…辻の碑…<多田街道>…教善寺…JR「北伊丹」駅

<報告:田添浩一>

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