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2016.04.13 【報告】
第509回関西文学散歩
~「大坂夏の陣」終結直後の復興町屋と堺の浪漫~
2016年4月10日(日)終了 <天気:曇り晴れ 参加人数55名>
月蔵寺、道犬供養碑前で
晶子、大和川の歌碑前で

 郵送して貰った集合案内に、「…大坂夏の陣屏風」(黒田屏風)」の左隻の端には、戦災に巻き込まれた庶民や敗走兵たちの悲惨な姿が生々しく描かれており、目を覆いたくなる光景……」とあった。前に、大阪城天守閣で件の屏風を観たことはあったが、真ん中辺りに描かれた武将たちに気を取られたのだろう、逃げ惑っているらしい男や女の姿は一向に目に入ってこなかった。さらに案内には「民衆の戦国と復興にかける心意気を(堺の町で)辿ってみたい」とあり、〝民衆の戦国〟という言葉にひかれて集合地へと急いだ。

 この日も指摘されたように、これまでの小説やドラマで、戦国時代に限らず、民衆、いわば我々の視点で戦乱が描かれたことがあったか。あの司馬遼太郎さんといえども、戦いそのものや時代、武将同士の駆け引きや戦闘は描かれたが、その時町衆は?という視点は無かったように思う。

 出発前に進行役の女性が、渡辺武氏の『戦国のゲルニカ』を高く掲げて見せてくれた。小説ではないが、説明を聞き、是非読んでみたいと思ったし、配られたレジュメの1ページ目に、本書口絵から町民虐殺や婦女暴行場面が4カット転写されていて、もう一度、大阪城天守閣で実物のあの屏風を再見したいとも思った。

 まがまがしい気持ちでスタートすると、すぐ大和川の沿道で、浅香浄水場のサツキが赤やピンクの花をつけ始めていた。朝一番の解説の後、心を和ませようとの演出なのか、のびやかで気持ちが洗れるような緑道コースであった。途中には与謝野晶子の歌碑「大和川砂にわたせる板橋を遠くおもへと月見草咲く」。大和川市民ネットワークの呼びかけで、堺市民ほか有志370名余の寄付によって建てられ、2013年9月に除幕式が行われたそうだ。晶子は幸せ者だなぁ。この心意気が、「大坂の陣」後の堺復興とも通じ合っているのかもしれない……。

 月蔵寺。境内に大野三兄弟(治長、治房、治胤)の三男で、堺の町に火をつけ全焼させた張本人、大野道犬斎治胤の慰霊塔があり、墓地にはその復興町割りを指図した風間六右衛門の墓がある。えっ! と一瞬唖然としたが、「堺の包容力なんでしょうねぇ…」と隣に立っておられる男性と顔を見合わせた。

 

テキスト:司馬遼太郎『城塞』(新潮文庫 上・下)、渡辺武『戦国のゲルニカ』(新日本出版社)

コース:JR浅香駅-浅香山公園-高須神社-清学院-水野鍛錬所(鉄砲鍛冶)-堺市立青少年センター (講演)-山口家住宅―月蔵寺(大野治胤墓)-妙国寺(家康歌碑・厄除けソテツなど)-堺伝統産業会館<一時解散>-ザビエル公園-「さかい利晶の杜」<最終解散>

<報告:田淵浩一>

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